70代でまだ現役の大工を続けるおじいちゃんは、私の誇りであり自慢だ。
会社で良い業績をつみ、昇格するより、カッコイいと思った。だから今は、この家に来て良かったと思ってる。
親は無くとも子は育つなんてよく聞かされるけど、今の私には千葉のおじいちゃんとおばあちゃんが親代わりみたいなものだから。
手を合わせ、料理に箸をつけながら1人そんな事を思っていた。


 千葉家の食卓はいつももにぎやかで、お笑い好きのおじいちゃんが、テレビを見て笑うのをおばあちゃんが怒る姿に初めて見たときは驚いたけど、今となっては“お決まり”のようになっている。


『ごちそう様でした。』


楽しい夕食を済ませると、宿題を片づけてくると理由を付け、二階にあがった。


『ふぅー…』


ドアを閉めると、机の前を素通りし、ベッドに座った。おばあちゃんには悪いけど、出された問題を解く気はない。
制服のポケットからケータイを取り、メールが着てないかをチェックした。


『あるわけないか…』


新着メールの表示が無いのを確認すると、そのままケータイを閉じた。


『本当は強がってるだけなのに…』


仰向けになり、誰もいない部屋でそう呟いた。でも、声に出したらもっと寂しくなった…
 週に何度も荷物送るなら、一度くらい顔見せに来てよ。そう言ってやりたかった。