ここで暮らすようになってから、週に何度かお母さんが荷物を送ってくる。仕事が忙しいのか、帰ってくるのは週1、2度がいい方。
中には、封筒が二通に、新しい洋服が数着きれいに畳まれてあった。


『これで娘のご機嫌とり。か…』


封筒を一通、自分の名前が書かれた方を取ると、中を覗き込んだ。
その中から手紙を取り出し目を通した。
 “葉瑠へ
元気? 仕事が忙しくてなかなか顔出せなくてごめんね。
学校は馴れた? 友達たくさん作ってね?
それからおばあちゃんの言うことちゃんと聞くのよ?
お小遣い入れておいたから好きな物買いなさい。
ママより”


『ハァ…』


手紙を封筒に戻し、同封された“お小遣い”を取り出した。


『二万円…こんなに要らないのに。』


「お母さんなんだって?」


突然現れたおばあちゃんに、もう一通の封筒を無言で渡した。
荷物の中には“桜 様”と書かれた封筒が必ず入ってる。
何が書いてあるか気にならない訳じゃない。
でも、読むのが怖くて未だに見たことがない。


『着替えてくる』


ダンボールを持ち上げ、二階へ続く階段を上がった。
“葉瑠”と書かれたドアプレートが掛かったドアを開けると、ダンボールとカバンを机に置いた。