『バイバイ!』


思わず叫んでいた。
すると相手に私の声が届いたのか、遅れて仁が片手を上げた。それに満足すると、微笑みながら家までの道をゆっくり歩いた。
段々重くなる足が、一件の木造二階建ての家の前で止まった。表札には母の旧姓“千葉”と書いてある。
私は一つ息を吐いて、玄関の戸を引いた。


『ただいまぁ! おばあちゃんいる?』


「おかえり。」


私を笑顔で出迎えたおばあちゃんに、もう一度ただいまと言った。
 小学の高学年になるまで家族3人、都内のマンションで暮らしてたけど、お母さんが仕事に復帰したい。といった日から、私はおばあちゃんと一緒に暮らし始めた。


「葉瑠に荷物届いてるよ」


『お母さんから?』


私の返事におばあちゃんの顔が曇った。


『どこ?』


「居間に置いてあるから」


『分かった。』


おばあちゃんは、それだけ告げると台所に消えて行った。
今日は肉じゃがかな?漂う匂いに鼻をクンクンさせ、居間に向かった。


『あ、あった…』


部屋の隅にポツンと、置かれている、ダンボールのテープを剥がすと、中を確かめた。