どんな会話をしていたのかは分からないけど、難しそうな話しだった気がする。


『ハァー…変に疲れる…』


ボソッと呟くと、二人の背中を見つめた。
正反対の二人。身長も柚樹の方が少し低い。
 その視線は段々柚樹に向けられていった。
見れば見るほどかわいい顔立ち。キチンと制服を着て、肩に掛けた鞄からは参考が覗いてる。
そういえば、「天気がよかったから、外で本読んでた」とか言ってたっけ?
イマイチ掴めそうで掴めない柚樹に、心の奥に微かなモヤがかかった。


 それから一言も言葉を発することなく、二人の背中を見続けた。
柚樹が突然足を止めたのは、その状況に慣れ始めた頃だった。


「じゃあ、僕はここで。」


別れ道で立ち止まると、「今日はありがとうごさいました!!」と手を振りながら少し急な坂を上って行った。
 柚樹に手を振り返し、姿が見えなくなったのを確認したとき、無意識にため息を吐いていた。


「あいつの言ってること半分もわかんねぇ」


それだけ言うと、仁は歩き始めた。