それを聞いた柚樹は、私の顔をジッと見たまま「緒方さんの事、よく見てるんですね。」と言った。


『ありがとう。 だから、中村柚樹のまま接すれば、仁は遠ざけたりしないと思う。』


「中村柚樹のまま…」


『それと、さっきから呼び捨てにしててごめんね?つい癖で…』


「あ、そのままで大丈夫です。」


『ありがとう。私の事は葉瑠って呼び捨てにしてくれていいから!』


「あ、分かりました。」


『これで、私と柚樹は友達ね?! だから、敬語も禁止。いい?』


驚く柚樹に笑顔を向けると、恥ずかしそうに俯いた。


『ところで、柚樹って私と同じ1年だよね?』


実は、柚樹が来たときからずっと気になってた。
敬語で話すのは初対面だからだろうけど、容姿のせいか年下に見える。
柚樹は当然と言いたげな顔で「一年です。」と言った。


『タメに見えないね。』


「顔のせいです。」


『制服着てなかったら、タメだって分からないかも…─』


少し柚樹と打ち解けた頃、授業の始まりを知らせる予鈴が鳴った。


『あ…仁が戻ってきた。』


私の言葉に、予鈴が鳴った事などすっかり忘れてる柚樹も仁を見た。