『なに?』


近づきながら、返事を返すと彼は少し驚き「なんかよう?」と聞いてきた。


『用はないけど。
なんでそんな前髪長いの?前、見づらくない?』


そう質問する私に、怪訝な顔を向け言った。


「ダサイのが好きなの。悪い?…で、なんでお前は付いてきたの?」


『気になったから。』


「…お前変わってるよな。」


そう言ってまた歩き出した。黙って後を付いていくと、校庭の隅で窮屈そうに枝を伸ばす一本の桜の木の前で止まった。
風で舞うピンクの花びらが、木の根を隠しそうなほど舞ってた。


「すごいだろ?」


綺麗さに圧倒され見とれていると、桜木の根に座る彼が私にそう言った。


『うん…。』


桜を見あげたままそう返した。
この学校に、こんな場所があるなんて知らなかった…


「お前名前は?」


『はる…桜庭葉瑠。』


「桜…なぁ、はるってどんな漢字?」


『え?』


私は近くにあった木の枝を持ち、桜で埋まった地面に名前を書いた。


「へぇーそう書くんだ。」


『結構気に入ってるんだよね』


「そう。なあ、お前の頭桜だらけだけど…」