ダサカレ─ダサイ彼氏ハ好キデスカ?

「桜庭じゃん!」


下駄箱で待つ水樹の元へ着くと、驚いていた。


『仁が先に帰っちゃったから』


「そう」


目を逸らし、何かを考える水樹の様子が気になったものの、柚樹に話しかけられ視線を外した。


「あ、職員室に鍵返しに行くの忘れてた!」


いきなり声を挙げた水樹は、私を残し行ってしまった。


『また置いてきぼりか』


 靴を履き替え、上履きを突っ込むと、さっきの仁の顔がよぎった。


『…バカ……』


呟き出口に向かうと、「誰がバカだよ」と声がした。


「誰が置いていったって?」


近づいてくる足音を聞きながら、動けずにいた。


「おい、聞いてんのかよ!?」


いきなり覗き込む仁から反射的に顔を背けた。


「えっ…」


『えっ?』


さらに覗き込む仁から逃げるように、歩くと「逃げんなよ」と追いかけてきた。


『ずっと不機嫌だったくせに、なんでそんなに楽しそうなのよ?!』


ブツブツ言いながら、緩む口元をマフラーで隠した。