「その日は天気が良くて、中庭のベンチで本を読んでたんです。
僕、見た目がこんなんだから、クラスで浮いてて…。その時もちょうどからかわれてて…そこに緒方さんが来たんです。
「ちょっといいか?」って。ボコられるとでも思ったのか、クラスの奴らが逃げちゃって。
その、言い方悪いですけど、僕一人逃げ遅れちゃって…」


『仁は見た目で損してるから…』


「そしたら、緒方さんに「悪い」って謝られて、答えに迷ってると「初対面でこんな事言うのもなんだけど、ちょっと頼まれ事してもらっても良いか?」って言われて。
どうして僕に?って思ったんですけど、さっきの事があったから話しだけでもって、聞くことにしたんです。
 その頼み事が「昼休みの間、校庭の奥にある桜の木の下に居てほしいんだ」っていう内容で、どうしてだろう?って思ってる間にそれだけ残していなくなっちゃって…、断る間もなく一週間くらい桜の下に座ってたんです。
 そしたら、昨日緒方さんが僕の所に来て「ありがとう、もう、大丈夫だから」って。それで気になって、桜木の下を見たら─」


『私が居た。』


「はい。」