「俺は…わかんないけど、同じ事は思うとおもう。でも、口には出さないし嫌いにもなれないと思う。アイツも苦しんでるんじゃないかな?」


『…そう。』


苦しいんだ……。
私の顔見ると思い出すのかな?
 水樹と共に部室をでると、心配だからと教室まで付いて来た。


「あんまり深く考え込むなよ?」


『ありがとう』


「じゃあ」


立ち去る背中を見送ると教室に入った。


『帰ろう?』


声を掛けると、何も言わずに教室を出た。
 上履きを履き替え外に出ると、雪が降っていた。


『今日も雪か……』


「これ持っとけ」


渡されたカイロを両手で握ると、雪の上に足跡を残した。


「寒い?」


『ううん』


今年の冬は去年よりも寒いとテレビで言っていた通り、鼻から吸い込む空気が冷たくてマフラーて鼻を被った。


『仁は?』


「ん?大丈夫」


素っ気ない返事。
渡されたカイロで手を温めると、仁のコートのポケットに返した。


「持ってろよ?」


『温まったから』


カイロを渡してくる手を握ると、想像以上に冷たくて顔をみた。


『…やっぱり仁が使って?』


仁は黙ったまま手を引っ込めた。白い息を吐き、カイロを両手で包む姿を見てマフラーの下で微笑んだ。