『いいおばあちゃんだね』


「それは~…、ホントの笑顔だな!」


『え?』


「じゃあそろそろ行くわ。迎えも来たっぽいし」


視線を追い振り返ると、こっちに向かって走る仁が目についた。


「何があったか知んないけど、それ舐めて元気だせ。ばあちゃんの飴は効くから!」


じゃあ!と帰って行く高橋にお礼を言うと、手を高く上げブイサインをした。『元気になるか…』貰った飴を口に入れ、深呼吸をした。


「──よう…」


息を切らせる仁は、ぎこちなくそう言った。


『……。』


「さっきはごめん。最後まで俺の気持ち聞いて欲しくて」


『………。』


「……どうしたら口利いてくれんだよ」


はぁとため息が聞こえ、頬を抑えるとさっきよりも腫れていた。


「あいつにも、怒られた…女の子に手をあげるなんて最低って」


小さく笑って、またため息をついた。


「ほっぺた、まだ痛むか?」


コクンと頷くとまた「ごめん」と言った。
しゃべるタイミングを失い、まともに顔も見れないまま、痛みだけが増えた。


「俺、ワガママだな。お前に甘え過ぎてたのかも」


歩くのを止めた仁は、私の手を掴んだ。


「怖いか?」


『……。』


「俺は怖い。」


ゆっくり私の前に来ると、またため息をついた。
 ずっと伏せたままの目を上げると、必死に涙をこらえ私の目を見ようとしてた。


「怖いけど、俺お前に嫌われる事にしたから、だから、最後に……」


この人は何を言っているんだろう?どうして抱きしめられてるんだろう?


『仁…?』


「やっと喋った」


『どうしたの?』