ダサカレ─ダサイ彼氏ハ好キデスカ?

 ──気づいたら家を通り過ぎてた。あれからずっと自分を責めて、頬がジンジン痛むたびに涙が溢れた。
ただ見たくなかっただけなのに、聞きたくなかっただけなのに、なんであんな事言ったんだろう?ただ黙って訊いてれば良かったのに。


「桜庭?」


名前を呼ばれ顔を上げると、ビニール傘を差した高橋が通りかかった。
慌てて涙を拭い顔をそらした。


「何してんのこんな所で?」


『家通り過ぎちゃって……』なんてバレバレの嘘に、作り笑いをしても、高橋は何も訊いてこなかった。ただ「ふ~ん」と言い「一人で大丈夫か?」と聞いてきただけだった。


『来た道戻るだけだから』


「そっか」


『うん』


「あっそうだ、これやるよ!!」


そう言ってポケットから出したあめ玉をくれた。


「元気がないとき食べると“元気になるよ~”って毎朝ばあちゃんがくれんの。子供扱いすんなよって言うんだけどさ、いつの間にか入ってんだよなぁ…」


そう言って笑った高橋の顔はクシャクシャだった。