ダサカレ─ダサイ彼氏ハ好キデスカ?

「今は本気で──」


「相手にされない事いい加減気づけよ。さっき言ったことは変わらない」


その言葉に一切の迷いは感じられなかった。


「…チッ、黙ってついてくれば私も好きになってあげようと思ってたのに」


急に声色が変わり、言葉使いが変わった。


「俺にはもう響心への感情はない」


そう言って裾を掴んでいた私の手を握った。


『じん?』


「だから、帰れ」


「…嫌だと言ったら?」


「俺が去る」


 沈黙になり、帰る気配も歩く気配もない2人に痺れを切らせ、仁に先に行くと告げると、「行くな」と言って手を離してくれなかった。


『先に行くだけじゃん、あとで傘届けてくれれば……』


「なんでいつもいなくなんだよ、なんで俺のそばに居てくれないんだよ」


『嫌だからに決まってるじゃない。こんな場面に遭遇して、仁の言葉を聞いてるのが辛いから消えるんじゃん!!
邪魔だって言えばいいでしょ?まだ好きなら一緒に行けばいいじゃ……っ!』


一瞬何が起こったかのか分からなかった。パンッ!と音と左頬が痛くなるタイミングが同じだった。


「冗談でもそんな事言うな。お前にだけは、葉瑠にだけは言って欲しくなかった」


『冗談?本気で言うわけないじゃん、バカじゃないの?』


胸がズキズキして、頬もジンジン痛んで、バカなのは自分なのに。


『ごめん』


「葉瑠……」


仁を避けるように、その場を離れた。