声を荒げたことにビックリし、仁の横顔を見ると頭を抑え俯いていた。


「ところで、隣のお嬢さんは?」


声色一つ変えず私に近づくその人に、恐怖を感じ後ずさりながら口を開いた


『私は…』


その先が出なかった。
私は仁の何?ただの友達?ちょっと上の親友?


「葉瑠にかまうな」


「ハルちゃんって言うんだぁ」


初めて名前を呼ばれ、顔を上げると目の前に仁の背中があった。


『仁……』


「どうしてお前の前から消えたか分かるか?どうして別れたか考えたことあるか?」


声しか聞こえなかったけど、仁が今どんな顔をしてるかだけは想像できた。


「別れてないわ。それに、今も仁は私のモノよ!!」


「フッ、相変わらずだな。お前が欲しいのは俺じゃない。この顔だろ?」


「……。」


沈黙が続き、雨足が一層強くなった時だった。


「二度と俺の前に現れるな」


仁が口を開いた。


「嫌よ。連れて帰るって決めたんだから!!」


「戻るつもりはないし、もう二度と愛する事もない。」


急に振り向く仁を見て固まってしまった。


「悪い、巻き込んだ」


髪を撫で微笑む顔は、かきあげた前髪がなくなり、隠れていた素顔が露わになっていた。
それは確かにその人の言うとおり、かっこよかった。