「なんか降りそうだな?」


『うん、でも遠くの方だし大丈夫じゃないかな?』


 教室に戻ると、高橋と目があった。何か言いたそうな顔はすぐに逸らされ、私から話しかけることもなかった。
 ──日が暮れ、軽音楽部のライブが熱を増した頃、私と仁は帰り支度を始めていた。生徒で溢れる廊下を抜け、人通りの少ないげた箱で靴を履き替え、灰色の雲に覆われた空を見上げた。
今にも雨を降らせそうな雨雲は、あれからずっと雷鳴を響かせている。


「少し急ぐぞ」


『うん』


早足で歩く仁に、ほぼ走ってる状態で付いていった。