「そんなハッキリ言わなくても……俺とコイツの違いってなに?」


『……全部?』


高橋と同じ質問をなんどか考えた事はあるけど、それしか浮かばなかった。
初めはただの興味本位で、好きになるとは想わなくて。一緒にいる内に心を開いてくれて、ただそれが嬉しかったのに、いつの間にか仁の隣が居心地よくて……


『でも、1人じゃなかったら尾行なんてしなかったかも』


「だれが?」


『仁が?』


「……ストーカー」


『ただ跡付けただけで、なんでストーカーになるのよ!?』


「言ってみただけだろ?ムキになんなよ!」


高橋がチラッと私の方を見た。


『高橋には分かんないよ』


「そうかもな」


そんなやり取りの隣で終始無言の仁は、ずっとホットケーキミックスを混ぜていた。時折その姿を、高橋が見ていたけど、最後まで二人が言葉を交わすことはなかった。


 ──昨日より早めに抜けると、昨日見れなかった場所を見て回った。
お化け屋敷に入って、微動だにしない仁に困るお化けを見て笑ったり、執事喫茶をやってる柚樹の所へ行って、三人で写真を撮りケーキを食べたり。


『はぁ~、楽しかった!!』


何もかも忘れ、思い切り楽しんだ文化祭も終わりに近づいたころ、遠くの方で雷鳴が聞こえた。
 その音に数人が窓の外へと視線を向けていた。それに釣られるように空を見上げると、ただ広く青い空があった。