教室に戻ると、授業まで少し時間があった為、綾と話していると、妙な違和感を感じ教室内を見渡してみた。
そこに思わず『いつ来たの?』と言いたくなるほど教室に溶け込む仁の姿を見つけ、“お前はゴーストか!!”とその背中に呟くと、ポリポリと仁が背中を掻いた。


『プーッ!!』


笑い声が出そうな口を抑え、声を殺し笑った。
それを見た綾に何度も「どうした?」と聞かれたけど、とても答えれる状態じゃなかった。
 綾にごめんと手を合わせると、困り顔の綾が頷いた。


『はぁー…死ぬかと思った。』


授業が始まるギリギリの所で笑いの渦から抜け出した私は、涙を拭いながら目の前にいる綾に『ごめんね』と謝った。


「別にいいけど、後で聞くからね!?」


それだけ残し、予鈴が鳴る教室を自分の席へと戻って行った。
 そうか、私チャイムが鳴るまで笑ってたんだ…まだピクつく口を抑え、始まった授業に真剣に耳を傾けた。
退屈な授業でも聞かなきゃ、静かな教室の中で笑い転げそうだったから。