ダサカレ─ダサイ彼氏ハ好キデスカ?

 ──文化祭当日。
チワワ喫茶と書かれた看板の隣には、本物そっくりなチワワがデカデカと描かれ、チワワの頭上にはWelcome to Chihuahua Cafeと書かれてあった。それに比べ、自信満々に描いた私達の看板は……


「なくてもよくね?」


『うん』


いつ来たのか、同じく看板と見比べそう呟く仁と同じ事を思った。


「看板作らされた意味がわかんねぇ…」


小首を傾げ教室へ入る仁を見て、苦笑してしまった。柄の悪いコックに見えるのは私だけだろうか?
「これ着て?」と渡されたのはついさっきで、衣装を作るついでにと調理担当全員に服が手渡された。


『仁、髪の毛縛ったら?』


「あぁ、そっか…」


こうなるだろうとあらかじめ用意していた、黒い布を差し『それか、地味だけどバンダナで隠すか』そう言うと、無言でバンダナを手にした。


「サンキュ!」


今まで邪魔だった前髪が抑えられ、メガネを掛けていてもハッキリわかる表情にドキっとした。


「緒方と桜庭はそっちで材料混ぜて、コッチに置いといてくれればいいから!──焼きと盛り付けは自分の位置に着いて!」


張り切るリーダーの声を合図に、チワワ喫茶が開店した。