ダサカレ─ダサイ彼氏ハ好キデスカ?

 「朝、声掛けられた」


昼休みの桜木に行く途中、珍しく隣を歩く仁にそう言われた。


「緒方仁を知らないかって言われて、知らないって答えた」


『そう』


「久しぶりに見たアイツは、やっぱり何も変わってなかった。あんなに愛してたのに、見方が違うんだぜ?出来るなら自分の顔棄てたい」


フッと笑う目が悲しかった。


「ってか、もうバレてんのかな?」


バレてないよ。喉の途中まで来た言葉を飲み込み、ため息を吐いた。


「やっぱ今日変だぞ?」


『えっ?』


「俺の事避けようとしてるだろ?」


『……。』


今朝の事を言おうか迷ってた。何もやましいことしてないし、言われた通りに対処できたと思うし。
だけど、それを切り出す言葉が出なかった。仁が悲しむ顔を見たくないから、なんて言い訳仁には言えない……


「保健室で休んで──」


『大丈夫だから。考え事してただけだし、どこも悪くないから!』


いつも以上に明るい声で言い切ると、顔を背けた。


「そんな無理してまで嘘付かれても……」


『ごめん。後で話すから』


その日のお昼の静けさはいつもと変わらなかった。