顔を合わせずプリントを差し出すと、腕を掴まれエレベーターの外に出された。


「そこで渡すなよ」


『ごめん』


私の手からプリントを受け取ると、一通り目を通し「ありがと」と言った。


『じゃあ、帰るね?プリント届けにきただけだし』


「なあ、聞かねぇの?なんで休んだのか」


『聞いてほしいの?』


「いや、そう言うんじゃないけど……」


『じゃあ、なんで休んだの?』


改めて質問すると、手すりに寄りかかり口を開いた。


「久しぶりに、行きたくなくなった……」


そう言われてなんて答えるのが正解なんだろう?


「答えになってねぇよな」


そう笑った笑顔が悲しかった。


『私も今日、早退しようか迷った』


「俺が居ないからとか言うなよ?」


『仁がいないから。……来る途中、すれ違ったよ?』


それが誰で何を意味してるのか、言われた通り報告すると、仁の顔色が変わり、声が低くなった。


「そっか。もし、俺の事訊かれても」


『知らないふりするから大丈夫』


「ありがとう」


『うん』


 その後どんな話をして、どうやって家まで帰ったのか、まったく覚えてなかった。