ダサカレ─ダサイ彼氏ハ好キデスカ？

「よくこんな傘で歩けるよな…でも、ぱっと見じゃわかんねぇか」


『浦田先生の趣味は、ちょっと理解出来ないけど、こんな傘は好きだよ？』


「お前がいなかったら差さねぇよ」


いつもよりよく喋るのも、傘のおかげか雨のおかげか……。憂鬱な雨も仁と一緒なら好きになれそうな気がした。


『あの車……』


一週間前と同じ場所にその車が止まっていた。
マンションの場所は教えたし、実際駐車場から出ていくのも見ていたから、こんな所に居るはずはないのに


「…はっ……」


それまで明るかった仁の表情も、前髪に隠れ見えなくなった。


『どうする？』


憶測でしかなく、なんとなくそうだろうと予想はしていたけど、あの車の女性が誰なのかずっと口には出さなかったけど、仁の態度で確信に変わった。
元カノ……だよね？
見上げた仁に笑いかけ、『家に来る？』と言ってみた。


思い切って言った言葉も『手とか繋いでれば、付き合ってるように見えるんじゃないかな？』の提案も曖昧な返事で、いつまでもその場を離れようとしない抜け殻の手を掴むと、黙って歩いた。