夏休みが明けても変わらないのは、教室と先生だけだった。
始業式も無事終わり、席替えが済んだ教室では、色んな声が飛び交っていた。公平なくじのもと行われた筈の席替えで、再び窓際の席になった私の隣は、幸運?にも緒方仁に決まった。
綾とはまた離れてしまったけど、仁とは違う距離が縮まった。


『よろしく』


あの日以来会ってないせいか、少しだけ気まずい
 相手からは無言の頷きしか帰ってこず、はじめましてなこの雰囲気に呑まれそうだった。
教室ではいつもの事の筈なのに、前より落込む自分が嫌だ。


 先生のこれからもよろしく挨拶の後の提出物、文化祭の話が右から左に流れていく。
文化祭の出し物は、きっと誰かが決めるだろう。一人考え事をしている間に、気づけば先生も隣にいた仁も居なくなっていた。
 不意にケータイのバイブが震え、驚きながら開くと、仁から“桜の下にいる”と報告のようなメールが届いた。


『なにそれ……ハァー』


返信せずポケットにしまうと、誰にも声をかけず教室を後にした。


『なんだろ、すごく嫌な感じ…』


桜木の下に向かうと、仁と柚樹が距離を置き座っていた。