『柚の家って広いんだね?』


「そうかな?水樹と一緒だから、あんまり広いって感じた事はないけど……」


『そう』


「うん…」


 それからまた柚樹に謝られた。柚はあと何回謝るんだろう?


『ねえ、私のどこを好きになったの?』


「えっ?!」


真顔でいきなり聞いたせいか、目を丸くし驚いてた。


「どうしたの急に…」


『なんか、知りたくて』


「んー…友達想いで、ちょっと変わってて、素直なところ?」


『じゃあ、いつから好きだって気づいたの?』


「いつかな?葉瑠が緒方さんを好きだって気づく前だから…桜を見に行った時くらい?」


『そうなんだ』


「ってなんで普通に答えてんだろう?」


 耳まで赤くしながら、麦茶を飲み干すのを見て笑い、日が暮れ『じゃあね?』と帰るまで色んな話をした。
 帰り際入れ違いで水樹が帰ってきて、私と柚樹を見て驚いていた。


「葉瑠?僕、無理に嫌いになろうとするの止めることにした」


『…うん、今日はありがとう。またね?』


玄関先で手を振る柚樹は、今日一番の笑顔で私を見送っていた。
 振り返る度小さく振る手は、一向に止むことなく、小さくなっても尚私に手を振り続けていた。