ダサカレ─ダサイ彼氏ハ好キデスカ?

「ってか、ここどこだよ?」


遠くに行きたくて歩いてるうち、知らない場所に来てしまったらしい。お祭りにでも出かけたのか、住宅街に人の気配はなかった。


『……聞かないの?』


「訊いても答えないだろ?」


肩を掴む手に力が入った。


「でも、中村すげー落ち込んでたぞ。ずっと俺に謝ってた」


仁は何があったのか知ってるんだろうか?柚樹、話したかな…?
 しばらく沈黙が続き、どのくらい経ったのか仁の足が止まった。


「こんな所に店がある」


よく見なければ見落としてしまいそうな場所に、その店の看板は立っていた。


『近備ニ…?(コンビニ)』


「フッ、よく考えるな」


そう言ってお店に近づくと、ベンチの前で下ろされた。


「ここに居ろよ?」


『うん』


お店に入る仁を見送りベンチに座った。下駄に足を乗せ、夜空を眺めていると、隣から物音がした。


『仁まだかな?』


不安になりお店の中を覗いて見るも、仁の姿はどこにもなかった。