『さっきまで緊張しまくってたクセに。なんか恥ずかしくなってきた』


人目も気にせず、堂々とイチャツく2人から顔を背けると仁と目が合った。浴衣姿の中村兄弟の隣にいたせいか、少し地味なその格好は『仁じゃないみたい…』だった。
シンプルな白のロングTシャツにジーパン姿、腰に巻いた青いチェックのシャツと髪型の違和感意外は。


「お前もな。いつもより…──」


途切れた言葉の先は柚樹の口から出てきた「かわいい!」そう笑顔で言ってくれるのは嬉しいけど、一番に聞きたかった人からは当分言葉をもらえそうにないらしい。
 イチャつく2人が手を繋ぎ歩き出したのをキッカケに、私達もその場を離れた。


『──いい匂い』


ずらりと並ぶ屋台に目移りしながらどれにしようか迷っていると、突然腕を引っ張られた。


『おっ!』


「葉瑠、あれ食べよ!?」


『あ、うん』


無邪気に笑い指差す先にはクレープの屋台があり、手を引かれ注文を終えると、知らず知らずの内に仁の姿を探していた。