祭り当日。おばあちゃんに着付けてもらい、3人が待つ場所へと急いだ。


『緊張してきた』


ドキドキとワクワクが入り混じった不思議な感覚が、全身を駆けていく隣では、綾が胸元を押さえ何かを呟いていた。


『綾でも緊張するんだ』


「帰りたい…」


『ダメだよ、綾の浴衣姿を待ってる人が居るんだから!ここまで来て1人とか…』


「そうだよね?どうしよう……」


物陰に隠れ見つめる先には、神社の入り口に並ぶ中村兄弟と仁の姿。
ここまで来て、恥ずかしくて出れない!なんておかしな話しだけど、普段と違う三人の姿を見ていたら忘れていた緊張がぶり返した。


『いつまでも待たせられないよ…時間もなくなっちゃうし』


「よし!葉瑠、お手!!」


『また…?』


差し出された手に投げやり気味に乗せると、ギュッと握られた手は冷えていた。


「お待たせ~!」


勢いに任せ進む後ろを、転ばないよう必死に歩いた。3人の元まで来ると、水樹の目が綾に釘付けになる。


「綾…?」


「女の子っぽいでしょ?」


さっきの勢いはどこへやら、目も合わせられない綾を、水樹が抱き寄せた。