一週間後、また少しだけ退屈な毎日に戻ったある日、綾から明後日の夏祭りに一緒に行こうと誘いを受け、迷わず"行く"と答えた。
 お祭り前日、綾が浴衣を持って訪ねてきた。
おばあちゃんに用があるらしく、真剣な顔でおばあちゃんと話してた。


「葉瑠も着るでしょ?」


『えっ? あー…私、浴衣持ってないから』


ごめんねと微苦笑し、目線を逸らした。


「葉瑠の浴衣なら、ちゃんとあるよ?」


『え?』


それを聞いた時、お母さんのおさがりかなんだろうとあまり期待をしていなかった。


「葉瑠が大人になって、浴衣が必要になったら渡してやってほしいって」


そう言いって席を立ったおばあちゃんは、「気にいるかは分からないけど」と白い布にくるまれた浴衣を持ってきた。紐をほどきながら「これはね」と話す言葉を聞きながら、徐々に顔をだす浴衣を見つめた。


『お母さんが葉瑠を想いながら選んだんだよ」


『私の為に?おさがりじゃないんだ…』


頷いた視線の先には、紺色の浴衣が出番を待ちかねたと言わんばかりに輝いていた。


「綺麗…」


綾の言う通り、私には勿体無いくらい綺麗だった。空色と紫の大きなアサガオは、紺のおしとやかさをさらに引き立て、サクラ色の帯がそれを少し抑えていた。
似合うか分からないけど、着てみようかな?素直にそう思った。