「なんで?」


『もう少し…って言ってたから』


「……それは…」


襟足を掻き、何故か動揺する姿に笑いを堪え、話を続けた。


『あとね、もっかいって言ってた。どんな夢見てたの?』


隠しもせずニヤリと笑うと、耳を赤くし顔を背けた。


『ああ、分かった!』


「言っとくけどな、お前が考えてるような夢は見てないからな!?」


『私まだ何も言ってないけど』


「お前!……お前が先に仕掛けたんだろ?!」


『何を?』


すると何も言わず、自分の手を貝殻のように握り私に見せた。


「お前が…するから。」


『……起きてたなら言ってよ!!恥ずかしすぎる…』


顔から火が出そうなほど一気に熱くなる頬を押さえ、キツく目を閉じ後悔していた。


「恥ずかしいのはお互い様だろ?」


『…そうですね』


「ほら、行くぞ?」


仁の後を追い、まともに顔も見れない程落ち込んでた。


「そこで落ち込むのやめろよ!」


『ごめん…』


「手ならいつでも繋いでやるから、俺の前で落ち込むな。思い出すから……」


『分かった』


 それから、まともな会話が出来るはずもなく、沈黙続きのまま十字路まで来た。


『ここでいいよ』


「送ってく、心配だし」


 結局家まで送り届けてもらい、最後までちゃんとした会話も無いままサヨナラをした。