グレーの制服に身を包み、目の下まで伸びた前髪から覗く黒縁メガネ。
彼の学校でのあだ名はダサカレ。
その名の通り、誰が見てもダサイ彼。
そんな彼と初めて会ったのは、桜が舞うある日。


「ダサイのが好きなの。悪い?…で、なんでお前は付いてきたの?」


『なんで…気になったから。』


「…お前変わってるな。」


それが私と仁が最初に交わした言葉だった。
入学当時から目立ってた彼は、ダサイ。と言われるとホッとした顔をする。クラスの女子の間でも、ダサイと笑われていた。


 ある日、一人で教室を出ていく彼を見つけ、興味本位で後を付けた。
職員室に消えてく彼を階段の隅で待ち伏せし、再びどこかへ向かう彼の後を追った。
 ガコンッ──げた箱に靴と入れ替えに上履きが突っ込まれる。
私は彼が去った後、慌て靴に履き替えた。
どこに行くんだろう?


制服のポケットに両手を突っ込み、俯きがちに歩く彼に見つからないよう、少し距離をあけ歩いた。
 校庭を横切っている途中、「なあ…」と振り向いた彼に声をかけられた。その声に、慌てる事なく(見つかっちゃった)くらいにしか思わない私は変わってるんだと思う。