ダサカレ─ダサイ彼氏ハ好キデスカ?

 言われた通り桜の木の下に行くと、樹に寄りかかり何かを見ている仁の姿を見つけた。


『いた……』


乱れた呼吸を整えそばまで来ると、仁に声を掛けた。


『ここにいたんだ』


平然を装ったセリフのような言葉の裏で、どうにかなりそうなほど緊張してた。


「座れば?」


『うん』


言われたまま座ると、「もう少し掛かんだと思った」そう言いながら仁が私を見た。


『水樹が帰るって言うから、一緒に抜けてきた』


「そう」


そこで会話が途切れ、温い風が葉を揺らし、照りつける太陽から逃げるように、日陰に足を引っ込めた。
それを見た仁が場所を変わろうかと言ってくれたけど、ここでいいと断った。


『夏休みの予定決まった?』


何度も聞いた質問に、「まだ未定」と返事がきた。


『そっか』


「お前は?」


『私も未定』


「そっか~、暇なの俺らぐらいなもんだろうな?」


そう笑い、そのまま私の方を向いてこう言った。


「じゃあ、どっか出かけるか?」


冗談だと思った。
でも、考えるより先に、小さな笑みがこぼれていた。


「どこ行きたいか考えとけよ!」


『…うん』


「あぁ、ついでに中村も誘うか?」


『ダメ!!…あ……』


思わず出た言葉に、しまったと思った。
俯いたまま顔を上げる事も出来ず、説明する言葉も見つからなくて、ただ仁の言葉を待っていた。