ダサカレ─ダサイ彼氏ハ好キデスカ?

 そうして過ごすしていると、繭乃くんが戻って来た。相変わらず一言もしゃべらずに、まっすぐ暗室に入る姿を見送ると、再び本に目を落とした。


「──…そろそろ帰るか!!」


パタンと漫画本を閉じテーブルに投げ置くと、大きく伸びをする姿が視界に入った。あれから繭乃くんは、一度も顔を出していない。


「桜庭は?」


暗室を見ていると、声を掛けられた。水樹なりに気を使ってくれているんだろう、返事を返すため振り向くとすでに帰り支度が済んでいた。
後は私の答え次第か。


『じゃあ、帰ろうかな?』


1人で居るのも気まずいし、帰るタイミングを失いそうでそう返した。


「楓ー俺達帰るから!」


「うん」


暗室から少し遅れて短い返事が帰ってきた。


「相変わらずだな……」


部室を出て少し歩いた所で、水樹がそんな事を呟いた。
 微笑しながら進む足は、二手に別れ歩みを止めた。


「じゃあ!」


『綾によろしく!』


「うん」


手を振りそれぞれ愛しい人の元へ急いだ。
階段を一気に駆け上がり、教室までの廊下を歩きながら息を整え、ドアの前で一息吐いてから教室に入った。