翌日、一階に下りるとおばあちゃんの言った通りお母さんがいた。昼過ぎに起きたお母さんは、大きなあくびをしながら居間で朝ご飯と言う名の昼食を食べている。
それを見て1人隣の部屋に移ると、締まったままの窓越に昨日からの長雨を見つめた。


「よいしょ」


暫くして隣に母さんが座った。「凄い雨だね~」なんて言いながら、アグラをかく姿を横目に見ていた。


「学校、楽しい?」


『うん』


「お母さんも葉瑠と同じ歳の頃はそんな感じだったなぁ…葉瑠みたいにいい子じゃなかったけど
 楽しいけどめんどくさくて、やたら授業が長くて。でも、今思い返すとあの時、どうしてああしなかったんだろう!!って思うのよねぇ」


『お母さんって、秋桜高だったんでしょ?』


「そうよ?葉瑠にも同じ高校に!って思ったんだけど、葉瑠の行きたい場所に行かせようか?って父さんと話し合って」


お母さんはずっと笑顔だった。その笑顔に戸惑い、なんだか恥ずかしいと思う私は、母からみたらまだまだ子供なんだろう今は“お母さん”と呼ぶのすら、少し違和感がある。


「ところで、好きな人は出来た?」


『またその話し?』


気づいたら、自然に笑っていた。過去から今までの分を取り戻すには時間が掛かるけど、不可能じゃないな気がした。
 その日は、夜中まで話し続けた。
夕食時、おじいちゃんとおばあちゃんは、私達を見てようやく安心したようだった。無意識のうちに迷惑を掛けていた事を申し訳なく思いながら、その光景に微笑した。