ダサカレ─ダサイ彼氏ハ好キデスカ?

「おい、無視すんなよ」


『私、おいって名前じゃないし…』


小さな声で呟きながら、とぼとぼ歩いてると、いきなり手首を掴まれた。


「おい、どこいくんだよ!」


『…離して…』


「男子トイレに何しに行くんだよ。」


『え…?』


顔を上げると、いつの間にかトイレの前にいた。


『あ…ハハッ…』


「ハァ…ちょっと来い。」


仁は何も言わず、私の手を掴んだままどんどん歩いた。
人目も気にせず歩く仁は、目立つことが嫌いなはずなのに、ワザと目立つ行動を取ってるように見えた。
 桜木の下に着くと、掴んだ手を離し根元に腰掛けた。そして一言「座れ」と言った。


『…はい。』


それに素直に従い、黙って座った。


『「・・・・」』


沈黙のまま何分が過ぎただろう? こうしてる時間が勿体無い。
きっとほんの数十秒くらいしか経ってないんだろうけど、この沈黙がすごく長く感じた。
 やっぱ仁も気まずいんじゃん!なんて心の中でツッコんで見たけど、声に出せない言葉がため息となって出た。


「お前何回ため息つくんだよ」