ダサカレ─ダサイ彼氏ハ好キデスカ?

『傘持ってきた?』


靴に履き替えながら尋ねると、無言で首を左右に振った。


「お前は?」


『折り畳みなら……』


カバンから折り畳み傘を出し、その場で開いて見せた。


『入る?』


「…いや、職員室行って借りてくる。さすがに2人は無理だろ」


『そうかな~?』


なんて言ったけど、仁の言う通り2人で差すには少し小さかった。
相合い傘で帰ってみたかったけど、しかたない。


『遅いなぁ……』


職員室から戻るのを待つ間、扉の前にしゃがみ、勢いよく降る雨を何も考えず、ただボーッと眺めていた。
 コツンッと頭を小突かれ、振り向いて初めて仁が戻った事に気づいた。


『傘あったんだ』


「ん、ラストだって」


透明なビニール傘を広げ、雨の中へ入っていく姿がキラキラして見えた。


「帰るぞ?」


『あ、うん』


赤い傘を差し、雨の中に足を踏み出した瞬間、頭上からザァー…と物凄い音がした。
 どうして傘があるなんて言ってしまったんだろう?後悔しても、傘を畳んで仁の側に行く勇気もないのに。


『雨が嫌いになりそう……』


一列に並んで歩く少し幅のある歩道ですら、傘が邪魔して並べない。
やっと並べても、雨が邪魔して上手く会話が続かなかった。