ダサカレ─ダサイ彼氏ハ好キデスカ?

『仁帰ろって、寝てるし』


少しガッカリしながらも、足元は音を立てないよう靴を脱いだ。
先に帰ればいいのに。仁の寝顔に言った言葉は声になることなく消えた。


 静かに隣の席に座ると、両腕を組み仁の方を向いて眠り、仁と同じポーズをしてみた。
そしてカバンからカメラを出すと、そっと机にカメラを置いた。
 ピントを合わせ、何度かシャッターを切った。


「…ん~?……お前も飽きねえな」


大きく伸びをする仁に、『うん』と答えた。


「ちょいカメラ、貸して」


戸惑いながらも渡すと、暫くカメラを観察した後、カメラのレンズが私に向いた。


「笑えよ」


『いきなり言われても…』


「いいから、はい!」


『おもしろくないと笑えませ~ん』


「ワガママな奴だなぁ」


『笑顔のお手本を!』


「やるわけねぇだろ?」


『ふふっ、やっぱり?』


「はい」


渡されたカメラを見ると、たった一瞬の笑顔が収められていた。


『いつの間に……』


「お前より隠し撮り上手いかも」


一瞬確かになんて思ってしまった────