ダサカレ─ダサイ彼氏ハ好キデスカ?

『いいの撮れました?』


「現像してみないと分からないけど、結構撮れてると思います」


『現像したらまた見てくださいね?』


「いいですよ。それより、何か撮ってたんですか?」


テーブル上のカメラを見て、そう聞いてきた。


『あぁ、水樹くんを……』


「あいつは、被写体にはならないでしょ?
マンガから目を離さないし、カメラを向ければムスッとするし」


撮った事あるんだ。少しムッとしながら水樹くんを凝視する姿に、何も言えず苦笑した。


「──じゃあ、僕は帰るので鍵は頼みますね?先生に渡してくれればいいですから」


鍵を受け取ると、繭乃くんは部室を出ていった。


「ハァー……」


扉が閉まり少し経ってからため息が聞こえた。
見るとマンガをお腹に乗せた水樹くんが、困った顔で扉を見つめていた。


「作り笑い疲れた。このマンガつまんないし」


そう言ってこっちを見た。


「帰りたかったら帰れよ、鍵なら閉めとくし」


そう言っておもしろくないと言ったマンガを読み始めた。


『じゃあ、お願いします』


「うん」


 部室を出ると、雨の音が一気に大きくなった気がした──
 その音と同じように、仁に対する想いも日増しに大きくなっていった。