その日も、いつものように授業を受け、慌ただしい昼休みを迎えた。
1人支度をしてると、ケータイが震えた。
見ると柚樹からのメールで、たった一言『ドア』とだけ書かれていた。
 それは仁にも行っていたらしく、偶然目が合い首を傾げた。


『ドア』


訳も分からず、書かれている通りに教室のドアを見ると、遠慮がちに顔を覗かせる柚樹が、私と仁のどちらかが気づくのを待っているところだった。


『堂々と入ればいいのに……』


いつかと同じく手招きをしても、柚樹は教室に入ろうとはしなかった。
明らかに誰かを探すというより、誰かを警戒している柚樹に、私の方から近寄った。


『入らないの?』


「うん」


目を伏せ再び教室を覗く柚樹をその場に待たせ、いつものコンビニ袋を持って柚樹の元へ戻った。


「緒方さん、誘わなくてよかったの?」


『あとから来るんじゃないかな?』


柚樹の問いに明るく言ったつもりだった。本当はちょっと後悔してるから……