「あ、水樹だ」


横断歩道の向こうに水樹くんの姿を見つけると、一目も気にせず大きく手を振っていた。
向こう側では同じように手を振る横で、必死に「止めて!」と止めに入る柚樹がいた。


「水樹、おはよう」


「おはよっ!!」


信号が青に変わるのと同時に、綾の元へ駆け寄る水樹くんは、抱きついた瞬間突き飛ばされていた。


『綾、やりすぎ』


「あーごめん!!」


顔を赤らめ私に謝る綾を見て、「謝る相手違くね?」と誰もが思った事を仁が冷静につっこんだ。
それに頷く水樹くんは、綾に一睨みされ笑顔で謝っていた。


「あっ、先生に用があったの忘れてた!」


「浦田じゃないよな!?」


その言葉を無視し、「先に行くね?」と言い残し、水樹くんと共に行ってしまった。


「変なカップル…」


「あの二人、いつもああなんです」


ぐったりする柚樹の話を、聞きながら学校へ向かった。


「昨日も家に来て、暫く静かだったんですけど急に隣が騒々しくなって、気になって見に行ったら、何をしたのか突き飛ばされてました……」


苦笑いする柚樹を見て、数日前綾から来たメールを思い出していた。確か、水樹くんと柚樹の事で言い合いになったとか、そんな内容だったと思う。


『綾、いい子なんだけど、ちょっと不器用な所があって……ごめんね?』


「葉瑠が謝ることじゃ、兄が何かしたのは確実ですから」


『ハハッ……』


苦笑するしかでなかった、こんな時でも黙っていられる仁が羨ましい