6月になり湿った空気の中学校へ向かっていた。今にも雨が降りそうな空を見上げ、傘も持たずに家を出た。


『いってきます』


今朝の天気予報で「雨は降らないでしょう」なんて言ってたけど、念のため折りたたみ傘をカバンの中に忍ばせてある。


「よっ!」


十字路を曲がると、ブロック塀に寄りかかる仁に会った。


『あっ、おはよう』


驚きながらも拶を済ませると、ナゼ居たのか聞くことなく並んで歩いた。
 しばらく歩くと、反対の歩道を違う制服を着た学生が歩いてるが見え、無意識に『秋桜高のか』と呟いていた。
その呟きが仁に聞こえたのか、視線が向けられた。


「知り合い?」


『知らない子。お母さんが秋桜だったから』


「へぇ~」


『桜高と真逆の方向に高校があるの』


「ふ~ん。もさ、お前ん家からだとあっちのが近くね?」


『そうだね』


だから?仁の言葉にイラッとし、思わずそう返しそうになった。
 それ以上口を開かないのを見て、何も言わなくなってしまった。


「──おはよっ!」


仁との距離が離れだした時、不意に肩を叩かれ、振り向くとニヤケ顔の綾がいた。


『おはよう』


「朝から仲がいいねぇ」


隣に並ぶ綾は、羨ましげに私と仁を交互に見遣った。