「葉瑠、どこか悪いの?」


後ろの方でそんな声が聞こえ、耳を澄ませていると、先生の顔がすごく近くに合った。


「ちゃんと聞いてますか?」

『あ、はい……』


「親御さんには電話しておくから、帰ったら直ぐに行きなさい。」


『分かりました』


 保健室を後にし、ため息を吐くと、柚樹が悲しそうな顔で立っていた。


「頭打ったって」


『ああ、ちょっと避けきれなくて…でも大丈夫だから!』


笑顔を見せると、ホッとした顔に変わった。
 ようやく学校を出ると、3人無言で歩いた────


「じゃあ、僕はここで」


横断歩道を渡ると、軽く手を振り足早に行ってしまった。


『柚樹に話したんだね』


「授業中ボール顔面に受けて倒れたって、保健室に運ばれた事と、気を失ってた事は言ってない」


『そう』


「普通なら避けれたはずなのに、珍しくボーっとしてたな」


『うん……』


「別にいいけど」


『今日お母さんと仲直りしたの。って言ってもケンカしてたわけじゃないんだけど、…色々あって、寝不足なうえに泣いたから目も腫れちゃって……』


「お前んとこも大変なんだな」


『うん、帰ったらおばあちゃんと病院行かなきゃ。また迷惑掛けちゃうなぁ』


「何ともないといいな?」


『うん』