ふと目が覚めると、カーテン越しの隙間から光が差していた。起きたついでに、制服からスウェットに着替えトイレに下りた。
あと数時間後には、頭に入らない授業を受けなければならないのかと思うと、ため息がでそうになる。


「あら、おはよう」


階段の途中、出勤前のお母さんと鉢合わせしてしまった。


『今から仕事?』


「そう、色々と忙しくて。葉瑠と話しする時間も作らないでごめんね?」


言いながらもピアスを付けるお母さんに、『だったら、辞めれば?』なんてまた後悔するような事を言ってしまった。


「そうよね。それが一番何だろうけど……」


『無理だって分かってるけど、勝手だよ。ズルいよ!!』


「ごめんね、葉瑠」


『謝るなら私の為に仕事辞めてよ。少しでいいから無理してよ……!!
ずっと友達のお母さんが羨ましかった。
一緒に買い物行って、一緒に料理作って、毎日笑ってたかった。
ワガママ言って、怒られたかった……』


最後の方は声にならなかった。溢れる涙ですべてぼやけて、立っていられなかった。