ダサカレ─ダサイ彼氏ハ好キデスカ?

 昼休みになり、騒々しい校内を足早に歩いていると、階段に差し掛かった所で誰かに肩を叩かれた。振り返るとそこには何も知らずに微笑む柚樹がいた。


「今行くところ?」


『うん』


なんだか妙に気まずい……いや、気まずいのは私だけで、相手は至って普通。ってか、めっちゃ笑顔……


『なにか良いことでもあった?』


「何も?少し退屈なくらい」


『そう。でも、楽しそう』


「それは多分、葉留に会えたから。2人ってちょっとドキドキするね」


『そう?』


「うん」


ハニカム柚樹に、釣られて微笑した。そして、放課後に起きる出来事を思うとため息が出そうだった。


「葉留、行かないの?」


『あっ、ごめん。』


靴に手を掛けたまま、ボーっとしていたらしく、柚樹が心配そうに覗き込んできた。


『柚樹』


「なに?」


『変な質問していい?……お兄ちゃんの事、どう思ってる?』


「本当に変な質問。
顔を見るとついケンカ腰になっちゃうけど、本当は感謝してるんだ」


『そうなんだ』


「こんな事聞いてどうするの?水樹に何かされた?」


心配そうに私を見る柚樹に『何も?』と答えごめんねと続けた。


「今日の葉瑠変だよ?」


『いつもの間違いじゃなくて?』


確かに今の私は変かもしれない。


『今日の放課後時間ある?』


「あるけど、どうして?」


『ちょっと見て欲しいモノがあって』


「見て欲しいモノ?」


『うん』


本当は会って欲しい人なんだけれど、断られるのを恐れ嘘をついた────