ダサカレ─ダサイ彼氏ハ好キデスカ?

 教室に入ると、まっすぐ仁の元へ向かった。誰もいない教室を警戒しながら。


「終わったの?」


耳からイヤホンを引き抜き言った。


『うん、一人になっちゃったから』


「そっか。……帰るか?」


『うん』


私の返事を聞くより先に立ち上がり、歩き出していた。近くて遠い距離を保ちながら────


『じゃあ、また』


十字路で言葉を交わしまたねと別れた。
 それから一週間が過ぎ、写真部で水樹くんと喋るのが日課になっていた。繭乃くんは相変わらずで、暗室に籠もりっぱなしだった。


「なあ、お前も現像の仕方教えてもらえば?」


本を読む私に、腕を組み机に寄りかかる水樹くんが言った。


『私のフィルムじゃないから』