ダサカレ─ダサイ彼氏ハ好キデスカ?

『……柚樹どこまで行くの?』


黙って歩く柚樹に連れられ、ついた場所は屋上の踊場だった。
 あがった息を整えてると、握られたままの手に力が入るのを感じた。


『柚樹?』


話しかけ辛い雰囲気の中、放って置くことが出来なくて名前を呼んだ。
 授業サボる事になるけど、仕方ないよね?
見えない誰かにそう投げかけ、ドアの前に柚樹を座らせると、その隣に自分も座った。


「ごめんね、助けるつもりだったのに……」


離れた手が熱く、その熱が逃げないよう両手を合わせた。
 隣で膝を抱える柚樹に目を向け、改めてお礼を言った。


『助けてくれてありがとう』


「あれでも兄さんなんだ、僕の……」


『うん。』


そのあと長い長い沈黙が続いた。


『私ね、中学の時は少ないけど友達がいたの。
流されるままトイレに付き合って、何となく話し合わせて、時々何も言わずにフッと消えたりして。居心地はよかったけど、退屈だった』


ふと思い出した過去を躊躇いもせずに話していた。それを大人しく聞いてる柚樹の目が、潤んで見えた。


「葉瑠は昔から変わってないんだね?」


『そうかな?』


「うん、凄く羨ましい」