『柚樹来るかな?』


「さあ?」


気まずさを隠すため、必死に話題を探した。


「お前さ、いつも同じで飽きねえの?」


『なにが?』


その問いに振り向くと、ほんの数秒空気が止まり小さな笑い声が聞こえた。腹を抱え笑う仁の声はどんどん大きくなり、困惑する私を見てもしばらく治まる事はなかった。


『ゆず!』


「どうしたんですか?」


 いつ来たのか小首を傾げた柚樹が1人呆気にとられていた。
この状況を理解しようと必死に頭を働かせている柚樹の視線は、仁に釘付けだった。


『さあ?急に笑い出したから……』


凝視する柚樹に釣られ見ていると、笑い声は小さくなっていった。
 前に一度こんな事があった気がする……


「緒方さんが笑う時って、いつも葉瑠の事だね」


『え?』


笑みを浮かべ座る柚樹の言葉に、珍しく仁が反論した。


「この顔見たら笑うだろ、普通」


私の顔を下から片手で挟むと、ぐにゅっと両頬を押されたまま柚樹の方を向かされた。
しばらく無言のまま柚樹と見つめ合ってた。