「……気をつけろよ」


『何に?』


「いや、なんでもない」


『繭乃くんなら大丈夫だよ?』


「だからいいって」


『心配してくれてるの?』


「んなわけねぇだろ、…ただ忠告」


『嘘つき』


「うるせっ」


呟くように言った言葉がくすぐったくて、しばらく緩んだ顔が戻らなかった。私の事、少しは女の子として見てくれてる?そんな問いを仁の背中に問いかけた。
 いつもの十字路で、『また、明日』と背を向け2、3歩進んだ時「なあっ」と呼び止められた。
振り返ると、夕陽でオレンジに染まった仁の顔が真っ直ぐ私に向けられていた。


『なに?』


「写真部の事だけど」


『まだ考えてない。って言ったら嘘になるかも』


「じゃあ…」


『繭乃くんには色々と教えてもらいたい事もあるし、カメラ始めたから分からない事だらけってのもあるけど、どうしても撮りたいモノがあって。
だから、月曜日に繭乃くんに入部する事伝えるつもり』