「おい!」


『えっ?あ、ごめん』


その声に我に返り見ると、仁と目が合った。
先に逸らしたのは仁だった。


「帰るぞ。」


『でも、誰かに見られたら……』


「嫌なら、俺一人で帰る」


それだけ言うと本当に歩いて行ってしまった。
まさか仁から、“帰ろう”なんて言葉が出るとは思ってない私は、嬉しさと驚きに少し不安が入り混じった変な感情が渦巻いていた。
 階段を下り、靴を履き替え、校門を過ぎても、一言も喋ろうとはしなかった。そう言えば、仁と話すのって今朝振り?


「昼飯、一人で食ったの?」


いきなりの質問に、一瞬間が開いた。


『同じクラスの松本綾って子と一緒に』


「そう」


そこからまた沈黙が続いた。そしてまた質問されて、を何度か繰り返してると、遊び帰りのサッカーボールを持った子供とすれ違った。
その少し後で、犬の散歩をしているおじいちゃんと挨拶を交わし、気づけば仁の後ろを歩いていた。


「お前、写真部入んの?」


何度かされた質問の中で、それが一番聞きたかったんだなと想った。
なのに『たぶん…』なんて曖昧な答えを返していた。