ダサカレ─ダサイ彼氏ハ好キデスカ?

「すごいなお前」


『そうですか?本当にこれが普通なんだけどなぁ』


「俺もそんな風に割り切れたらなぁ」


最後の言葉は聞こえないフリりをした。
 しばらく本を読んだ後、暗室に目を向けた。
あれから大分経つけど、繭乃くんはあのカーテンの向こうで何をしているんだろう?


「気になるなら見てくれば?」


『えっ?』


「邪魔しても怒んないと思うよ?俺は例外だけど」


暗室に目を向け読みかけの本を閉じると、カーテンの前まで足を進めた。
本当に声をかけて大丈夫なのか、不安になり後ろを振り向くと見てもいないのに「大丈夫だよ」と言われた。その人の髪が茶髪な事を知ったのはその時だった。


『その言葉信じますよ?』


そう呟いた後で繭乃くんの名前を呼んだ。


「…は、い」


手が放せないのか、返事の後カーテンから顔を出す繭乃くんは少し滑稽だった。


『あの、なにしてるのか気になって。邪魔だったら言って?大人しく本読んでるから……』


「邪魔ではないですけど、見ます?もうすこしで終りますけど」