「そこでも、客同士がケンカして、死人が出た。ま、偶然かもしれないけど」

さすがに、住民たちは気味悪がった。
そこで、寺の住職による供養が行われた。

「しばらくは町も静かだったんだ」

ところが。
あるスーパーに、黒いワンピースの女が現れるようになった。
そして、声をかけられた店員が殺される事件が起こった。

「腹を裂かれて、目玉がくり抜かれていた。その時に、監視カメラに女が映ってるんだ」
「……」
「だが、女はどこにもいないんだ」

殺人事件が起きたアパートから、住民はいなくなった。
ところが、時々、夜中に女の部屋から声がするという。

「アパートの管理会社も動いた。御祓いをしてもらったんだ。すると、別の場所、近くのマンションなんかに、女が現れる。同じようなことが、何回も繰り返されてるんだ。この町では」
「町の人はみんな……信じているんですか」
「信じたくないけど。子供の頃から、『スーパーで、黒いワンピースの女に声をかけられたら逃げろ』って言われている」