「……良く来る店なんですか、ダンナ?」
何となく、気まずい雰囲気になってしまった。
トールは、取り敢えず先程のやり取りは無かったことにしてドルメックに話を振ってみた。
「…ああ、時々。
この辺歩いてるとたまに誘われて、な。
断る理由も無いし、上の部屋も使えるしな」
そう答えて意地の悪そうな笑みを浮かべる。
こうした酒場は、二階が宿泊施設になっていることが多い。
この店も、例に漏れず宿屋としても利用出来るようだ。
多くを語らずとも、彼の言動が何を意味するかは明確である。
トールも同じ男としては羨ましい限りだ。
「…ど〜も、ご馳走様です〜」
若干イジけ気味に返答する。
ドルメックは確かに、背も高いし均整の取れた身体付きをしている。
顔立ちだって悪く無い。
身のこなしも軽やかで、見る者の目を引く。
服装さえ整えてニコリと微笑んでやれば、大した苦も無く女性を落とせるだろう。
「ダンナは恵まれた外見ですもんねぇ〜。
アタシなんか只の糸目でネクラな情報屋ですから〜」

