王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-




眉根を寄せ、訝しむ様にベリルを見据える。


(…こいつ、『使えなかった』訳じゃなく、敢えて『使わなかった』とでも言いたいのか…?)


そんなドルメックの思いを知ってか知らずか、言葉を続ける。


「核石を使う気はないのだろう?」

「この戦いは仲間を救う為なのに、仲間の命を犠牲にする訳無いだろ」


探る様な台詞に、ドルメックの語気が強まる。
するりと受け流される様な会話に、疲れてきていた。


「では、補助にだけはなってもらえ…」

「…何を…」


何を言っているんだ…と言おうとしたが、途中で言葉に詰まってしまった。

ベリルが前髪をかき上げ、右目を覗き込んできた為だ。

異様に近い距離で、全て分かっているかの様に話す。


「目は弱い。自分の核石を使うつもりなら、目を守ってもらうといい。それならば負担にはならない」


自分の弱点も核石の特性も、抱えている想いすら、分かっているとしか思えない発言。
ドルメックの背筋を冷たいものが走る。


「余計なお世話だ!」


つい、キツい口調になる。
全てを剥ぎ取られる様で怖かった。


「私怨は何も生み出さないよ」


追い詰められた心は理性を完全に奪っていた。

反射的に身体が動く。
ベルトに下げたナイフに手が掛かっていた。